削らない虫歯治療と歯医者さんの歴史

歯科治療のルーツは古代エジプト時代から

歯科治療の歴史を紐解く

近年は歯科治療の技術が急速に進歩していて、痛みの少ない「削らない虫歯治療」も可能となりました。歯科治療に関する高度な知識や技術を持つ歯科医が多く、歯科医療設備が充実したデンタルクリニックが全国各地に増えています。

ところで、現代のように歯科治療に関する知識や医療設備がなかった古い昔の時代には、どのようにして虫歯の治療を行っていたのでしょうか。そこで、歯科治療と歯医者さんの歴史を紐解いてみたいと思います。紀元前3000年頃の古代エジプト時代から、歯科医による歯科治療が行われていたと伝えられています。

この時代には電気はまだ使われていない状況で、大規模な検査機器や歯科医療設備はありませんでしたが、虫歯治療や抜歯治療方法はすでに日常的に行われていました。それから長い時を経てローマ帝国時代に突入すると、さらに歯科医療の技術が進歩して、金属を原料とする歯の詰め物や義歯が造られるようになりました。歯科治療による痛みを抑えるための麻酔薬が導入されるようになったのは、19世紀後半になってからです。

アメリカの歯科医師が笑気ガスによる独自の麻酔法を開発しました。さらにその後は歯肉に麻酔薬を注入する方法など、新しい方法が次々に開発されました。

日本における歯科医の歴史について

それでは視点を変えて、日本国内における歯科医の歴史について見ていきます。日本国内で歯の治療について記された最古の書物は「医心方」で、西暦982年頃に発刊されました。

「医心方」の主な内容は、鍼灸・治病大体など30の部門別に分類されていて、医学・歯学に関する専門的な知識や技術や養生などについて解説されています。

その当時に朝廷の主治医であった丹波康頼が「医心方」の編集作業に携わり、虫歯・歯槽膿漏などの治療法について監修しました。丹波康頼が亡き後もその子孫によって歯科治療が受け継がれてきましたが、丹波一族のみの秘伝とされてきたことから、実際にどのような治療法が行われていたのかは公 (おおやけ) には知られていません。

歯科治療を行う医師のことを現代では歯科医、または歯医者さんと呼ぶのが一般的ですが、江戸時代の頃は口中医師・歯師・歯薬師・抜歯師といった呼び方をされていました。

この時代には麻酔による治療法は日本国内にはまだ伝えられていなかったため、虫歯や抜歯の治療では強い痛みをともなうのが当たり前でした。